インドネシア 再生への挑戦 / 石田正美編 アジア経済研究所 JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)
2005年3月31日発行の
「インドネシア 再生への挑戦」という本を読みました。
アジア経済研究所というだけあって、
略語や経済専門用語たっぷりの
インドネシアビジネス一色の本でした。
内容がやたらと濃かったです ^ ^
ベトナムの
「ベトナム産業分析 この一冊でベトナムの今が分かる!」を読んだ時も
そう思いましたが、JETROさんの本は
いつもすごくよくまとまっていて
経済的視点、政治的視点、法・制度的視点などから
海外の国を眺めるときの書籍としてはバツグンです!
序章 転換期を迎えたインドネシア --- 混乱から再生へ
第1部 ポスト・スハルト時代の停滞と見え始めた展望 第1章 ユドヨノ政権の成立とその課題 第2章 対外経済関係 --- 日本との緊密な関係と台頭する中国・AFTA 第3章 マクロ経済の動向と課題 --- 投資の回復に向けて 第4章 経済危機と中央政府債務
第2部 法・制度改革の取り組みと問題点 第5章 財政健全化に向けた取り組み 第6章 インドネシアの労使紛争処理制度改革 --- 労使紛争処理に関する法律2004年第2号を中心に 第7章 インドネシアにおける知的財産権をめぐる問題 第8章 インドネシア石油・ガス産業 --- 自由化時代の展望と課題
第3部 “改革の時代”の取り組みと残された課題 第 9章 投資環境改善に向けた政策対話 第10章 ポスト・スハルト時代の地方分権化 --- ブカシ・カラワンの事例から 第11章 インドネシアの電力事情 第12章 人材育成と職業訓練 第13章 再生に向けた展望と課題
この本が出版された頃は、
ちょうど 1998年のスハルト政権崩壊や
それに伴う民主化、地方分権化、
1999年のアジア通貨危機、東ティモール独立などの
影響や結果が出始めて、かつ、中国の台頭などによる
国際環境の変化も現れ始めた時期にあたります。
5年前の本ですが、そのような時期に、
史上初めて国民による直接選挙で選ばれ、
今まさにスタートしたばかりの
ユドヨノ新政権の展望と課題を示していて、
読んでいて胸がワクワクしてくる感じです。
読み続けると、判りますが、
とにかくインドネシアという国は難問山積、
混乱が渦巻く国のようです。
ですが、個々の分野で、
それらの問題点に力強く取り組むインドネシア政府や
インドネシアの人びとの様子が、
ビジネスを視点にハッキリ見えてくる印象を
この本には抱きました。
まず、最初に 2004年5月実施の総選挙や
同7月実施の大統領選挙の経過が書かれていましたが、
改革を目指すインドネシアのリーダー達が
全国民参加の健全な選挙で選ばれていることは
実にすばらしいと思いました。
非常に民主的な印象を受けました。
また、経済面では
対外貿易、直接投資、援助などインドネシアと
緊密な経済関係を構築している日本の件はもちろん、
1990年8月にようやく国交回復を果たした中国や
NIEs、ASEAN諸国との関係にも紙面が多く割かれていました。
ちなみに、安価な労働力、市場の今後の成長性を求める
日本の直接投資によって設立されたインドネシアの日系企業は
2005年3月時点で、1028社にのぼり、
そこに勤務するインドネシア人の数は 25万人を超えるそうです。
マクロ経済では、インドネシアの経済発展は、
東アジアの他の国々から取り残されているように思われると
書かれてしまっていました。道路や港湾、空港、通信、電力の
安定供給不足など産業インフラが未整備だったり、
裾野産業による産業集積が進まなかったりで
多国籍企業から投資先としての魅力が低いと
判断されてしまっているそうです。
経済危機と中央政府の債務、財政の健全化に関しても、
その経過や対策が時系列でわかりやすくつづられ、
危機的状況をなんとか脱していく様がよく理解できました。
知的財産権については、
インドネシアは “海賊版王国”のようで、
その対策に試行錯誤をしている様子が書かれていました。
なんでも、閣僚含め国全体で
知財は外国人の利益にはなるが、
インドネシア人の利益にはつながらないという
イメージが強くあるようです・・・
あと、買い手市場となった液化天然ガス(LNG)の
供給国同士のマーケット確保をめぐる熾烈な競争も
見事に描写してあって迫力がありました。
それから、インドネシアは
“海賊版大国”であるだけではなく、
“汚職大国”でもあるそうです(笑)
2000年法律第34号に
「地方行政府・機関は住民およびビジネス界への公共サービス提供や
各種許認可・ライセンス等での便宜をはかる際、それに応じた妥当な
提供料を得ることができる」という条文が存在しているようで、
これが汚職を助長しているそうです。
すごい法律ですねw
そして、最後に、とびきり面白かったのは
日系企業の社内研修の話です。
現地で大卒者を雇用し、日本で 1年間研修をしたら
ほとんどの社員が帰国後すぐに退職してしまったそうです。
研修に参加した際の修了証を転職の材料につかうんだそうです。
こりゃたまんないですね(笑い)
いやー、
ざっと書き連ねてみましたが、
正直、内容が整然、ギッシリと濃くつまってるので
1回では頭に入りません(泣く)
僕がもう少し頭がよければ、
1度でも理解したり、暗記しちゃうんですが・・・
でも、めげずに、ジャカルタへ行く飛行機の中ででも
もう一度読み返したいと思います。
インドネシアにかかわらず、
生きた国家の経済や政治・社会の勉強だと思えば、
何度も何度も読み返す価値があると思います。
内容が濃いこの本は!
(僕が読んだインドネシアの本)
・ジャカルタ路地裏フィールドノート / 倉沢愛子
・アジア遊学 No.90 ジャカルタの今を読む / 勉誠出版
・アジアの大都市[2] ジャカルタ / 大阪市立大学経済研究所[監修]
・インドネシア 再生への挑戦 / 石田正美編 アジア経済研究所
・2009年インドネシアの選挙 / 本名 純・川村 晃一編 アジア経済研究所
(参考)
・じゃかるた新聞 インドネシア最新ニュース
・インドネシア語技能検定試験 - 日本インドネシア語検定協会
村内伸弘@ムラウチ ドットコム♣
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