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物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム / 小倉 貞男

物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム / 小倉 貞男  中公新書

 
 
中国や中国文明、風習の影響を大きく受けたベトナムですので、
中国に支配される様や、その中国の支配に反抗する様、
面従腹背する様が前半延々と続きます。
ベトナムの歴史は中国なしには決して語れず、
中国との葛藤はものすごいものがあるようです。
 
 
親近感が沸く話としては、
遣唐使として、日本に帰れず、
長安で客死したあの阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)は
帰国の際に暴風雨にあってベトナムに漂着したそうです。
なんだかベトナムがより身近に感じられますね!
 
それから、ベトナムと日本の共通点として、

元(モンゴル)の攻撃を受けていることですね。
ベトナムは元軍に3度侵攻され、国土や首都を蹂躙されたそうなんです。
最終的には戦いに勝利し、フビライの死もあって
国は救われたみたいです!

元がベトナム征服を優先したことで、
日本の3度目の遠征を中止せざるを得なかったとも
書かれていました。ベトナムがなければ、
日本に3度目の元寇があったかもしれなかったということです。
歴史に「もし」「たら」「れば」はありませんが、
歴史の綾を感じることができる興味深い話だと思います。
 
 
ページを半分ぐらい過ぎると、
今度は「北属南進」という単語が出てきました。
北(中国)に侵略され、支配されたベトナムと
南(メコンデルタなどインドシナ半島中南部)を侵略したベトナムという意味になります。

その、南を侵略・併合し、国土を拡張させたベトナムの
時代が始まるわけです。

そもそも、世界史の勉強を高校の時にしているとはいえ、
日本での世界史は、ほぼ西洋史であり、中国史ですから、
ベトナムの地でどのような歴史が綴られてきたのかなんて
ほとんどの日本人は知らないわけです。

ましてや、ベトナムの各時代時代で活躍した
歴史上の人物なんて知るわけがないんです。
信長、家康、秀吉、龍馬といった感じで
名前はスラスラでてこないんです。

ですので、まずは聞きなれないベトナム人の名前が
でてきて、今はなき昔の国名や古い地名がでてくる
この「物語 ヴェトナムの歴史」は正直
なかなか読んでみても頭に内容が入りにくい感じです。
一言で言って、読むのがキツイです(笑い)

そんな理由で、読んだもの全部を
一回で頭に入れるのはそもそも困難なので、
この本は個々の人名や地名を記憶するのではなく、
ザーッと約2000年の歴史を読みきって、
ベトナムという国やそこに暮らす人々が
どんな流れで現在に至っているのかだけが
わかればいいんだと悟りました。

その意味では、この本は
滔々と流れるベトナムの歴史を
一気に読ませてくれるので、
やはりベトナム理解の強力な一冊になりました。

本のところどころに
ベトナム人の気質や考え方も記されてますので、
誰がとか、いつとかが頭に入らなくっても
ベトナムという国への理解と愛情は深まります。

学術的な本ですが、
ベトナムを訪れる人は、
読んでおいた方が良いと思いました。
 
 
但し、後半部分のフランス植民地時代については
日本でいうと、幕末からの物語なので、
世界史の近代史と合わせて読むことができ
理解がすごくしやすいです。

同時に、近代化が遅れたベトナムに対する
フランスの過酷な植民地政策やそれへの抵抗運動、
国家の南北分断、アメリカとの救国戦争など
ベトナム動乱の歴史がこの後半部分に
ギッシリ詰まっているので、読み応えがすごいです。
この部分こそが、まさにベトナムの歴史なんだと僕は思いました。
最後にこの点を強調させていただきます!

“ホーおじさん”、ホー・チ・ミン(胡志明)の章が
最後にありますが、この章は読み進めると
ゾクゾクワクワクしてきます!
まさに、20世紀の英雄の物語、革命家の物語です。

1930年2月7日、香港・九龍。
「ベトナム共産党」結成の部分で、こう書かれていました。

ホーチミンの考え方の重要性は、党の中心的課題は
「ベトナム革命」であるという点であった。ベトナム革命は、
「プロレタリアを先導とするブルジョワ民主革命であり、
帝国主義と封建主義を倒し、民族独立を達成し、
土地改革を実現し、共産社会を目指す」というもので、
「ベトナム独立」がもっとも重要であるといういわば
民族主義的運動に力点がおかれていたことに注目しなければならない。
このとき党員は500人だったといわれている。
 
 
それから、1945年8月のインドシナ共産党全国大会での
ホーチミンのアピールもすばらしいものがあります。

「わが祖国の運命を決める決定的なときがきた。
全国の愛国者諸君、われわれの力によって
わが民族を解放するために立ち上がろう」
 
 
1945年9月の独立宣言の文章にも
カラダが震えるものを感じずにはいられません。

「われわれベトナム民主共和国臨時政府の閣僚は
世界に向かっておごそかに宣言する。ベトナムは
自由な独立国になる権利があり、事実、すでに
そうなっている。全ベトナム人民はその独立と
自由を守るために、すべての物質的、精神的力を
動員し、生命と財産を捧げる決意である。
ハノイ。1945年9月2日。大統領 ホー・チ・ミン」

それからそれから遺書もカッコよすぎます!
「アメリカの侵略に対する抵抗戦争は長引くかもしれない。
この愛国闘争において、われわれは実際に一層多くの
困難と犠牲を経験しなければならないだろう
いかなる場合にも、われわれは全面的勝利まで、
アメリカ侵略者と戦うことを決意していなければならない。
われわれの河、われわれの山、わが人民はつねに
存続するだろう。ヤンキーは打ち破られ、われわれは
祖国を十倍も美しく築くだろう。いかなる困難辛苦が
前途に横たわろうと、わが人民が全面的勝利を
勝ちとることは確実である。アメリカ帝国主義者は
引き揚げなければならないだろう。わが国は英雄的
闘争を通じ、二つの大帝国主義-フランスとアメリカ-を
打ち破り、民族解放運動に価値ある貢献をした
一少数民族たる大きな名誉を持つだろう」

あと、ベトナムの詩について書かれていた部分で、
「ベトナム語というのは六声ある単音節の語で、聞いていると、
まるで鳥がさえずるような抑揚のある美しい語を発する。」とありました。

ベトナム語は今までほとんど聞いたことがないので、

ベトナムの地で、この小鳥がさえずるようなナマ声を
たくさん聞けると思うと今から楽しみです!!
 
 

奴隷になるなら死んだ方がましだ。 もっとも大切な独立と自由をかちとるために闘争する。 独立と自由ほど尊いものはない。(ホー・チ・ミン)



(僕が読んだベトナムの本)
INSIGHT GUIDES 「VIETNAM(ベトナム)」

ベトナム産業分析 この一冊でベトナムの今が分かる!

まっぷる(マップルマガジン)2011 ベトナム

ホー・チ・ミン わが祖国の自由と独立 / 日本ベトナム友好協会

正伝 ホーチミン / ベトナム労働党中央党史研究委員会

現代ベトナムを知るための60章 / 明石書店

物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム / 小倉 貞男

人間の集団について ●ベトナムから考える / 司馬遼太郎

泥まみれの死 沢田教一ベトナム写真集

 
(参考)
ベトナムフェスティバル2010 Vietnam Festival 2010 - 2010年9/18日(土),9/19(日)

ベトナムスケッチ

ベトナムフォトジャーナル

ベトナム政府観光局

ベトナム社会主義共和国 - 外務省

ベトナム - Wikipedia

 

村内伸弘@ムラウチ ドットコム

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