中原中也 「盲目の秋」

中原中也 「盲目の秋」

風が立ち、浪が騒ぎ、
  無限の前に腕を振る。

その間、小さな紅(くれない)の花が見えはするが、
  それもやがては潰れてしまう。

風が立ち、浪が騒ぎ、
  無限のまえに腕を振る。

もう永遠に帰らないことを思って
  酷白(こくはく)な嘆息するのも幾たびであろう・・・

私の青春はもはや堅い血管となり、
  その中を曼珠沙華(ひがんばな)と夕陽とがゆきすぎる。

それはしづかで、きらびやかで、なみなみと湛え(たたえ)、
  去りゆく女が最後にくれる笑い(えまい)のように、
  
厳か(おごそか)で、ゆたかで、それでいて佗しく(わびしく)
  異様で、温かで、きらめいて胸に残る・・・

     あゝ、胸に残る・・・

風が立ち、浪が騒ぎ、
  無限のまえに腕を振る。




いいですね~
うん、とってもイイです。
異様で、温かで、きらめいて胸に残る.....
ああ、胸に残る........

村内伸弘@ムラウチ ドットコム

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