藤村詩抄(とうそんししょう)。
島崎藤村が「若菜集」「一葉船」「夏草」「落梅集」から
自選した詩が詰まった合本の詩集です。
若々しい藤村、
若々しいニッポン、
若々しい明治。
この詩集のページをめくるたびに
伝わってくるのは、
それはそれはみずみずしい若さなのです。
僕がこの世で一番好きな「初恋」、
梅花(ばいか)の油黒髪の乱れて匂ふ「傘のうち」、
をとこの涙ながれいでお夏の袖にかかるとき「四つの袖」、
そして島崎藤村の絶唱「千曲川旅情の歌」などなど
パラパラめくって読むだけで
理想に燃える明治の青年の躍動が伝わってくるかのようです。
こんなにもニッポンは若かったんだ!
新鮮なおどろきです。
藤村自身が
明治37年(1904年)夏に書いた「自序」と
昭和2年(1927年)5月に書いた「抄本を出すにつきて」が
この本の最初の7ページだけで比較して読めるのですが、
遂に、新しき詩歌の時は来たりぬ。で始まる
明治37年の「自序」からは若々しいエネルギーがあふれ出ています。
対して、おのが青春時代をなつかしむ白髪の藤村が書いた
昭和2年の「抄本を出すにつきて」には
もはや一片の若さもありませんでした。。。
この見事なまでのコントラストに
ただただ、にんげんの儚さ(はかなさ)を感じます。
明治30年代が持っていた鮮やかでいきいきとした空気。
そのざわめきを胸いっぱいに吸い込むのには
この一冊が最適でしょう。
青春のいのちはかれらの口唇(くちびる)にあふれ、
感激の涙はかれらの頬をつたひしなり。
こころみに思へ、清新横溢なる思潮は
幾多の青年をして殆ど寝食を忘れしめたるを。
また思へ、近代の悲哀と煩悶とは幾多の青年をして
狂わせしめたるを。
こんな時代が僕たちの国・日本にもあった。
どうしようもないぐらい若くて純粋ですばらしい時代!
あゝ、その名は明治!!
村内伸弘@ムラウチ ドットコム
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